PROFILE
島内 晶SHIMANOUCHI Aki
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明治学院大学大学院心理学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所(旧、東京都老人総合研究所)研究補助員および研究生、群馬医療福祉大学社会福祉学部福祉心理コース准教授を経て、現職。
専門:
生涯発達心理学、高齢者心理学
主な担当科目:
エイジングの心理学、行動科学概論A(心の仕組み)、心理学実験など
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心理学に興味をもったきっかけ
中学時代にふと思った。
「人って、なんでこんなに違うんだろう」
中学時代に人の性格や個性の違いに興味を持ちました。同じ出来事に直面しても、明るく受け止める人もいれば、落ち込む人もいる。初対面でもどんどん話せる人もいれば、慎重に距離を測る人もいる。なぜこうも違うのだろうと考えることが多かったんです。発端は、自己中心的で人を顎で使うような子がいたこと。体も大きい子だったので、歯向かうことができない。みんな嫌々ながらも従うしかなくて、なぜその子がそんな行動をとるのだろうと不思議で仕方がありませんでした。それからパーソナリティ心理学に興味を持つようになり、大学では心理学部に進学。人格診断学を学べるゼミを選びました。ところが入ってみると、高齢者心理学がご専門の先生だったんですね。心理学には幅広い様々な分野があるので、先生のご専門もいろいろ。私の現在の専門である、生涯発達心理学、高齢者心理学との出会いは、ちょっとした偶然なんです。ある意味ご縁なのかもしれません。
卒論では「きょうだい関係と性格」をテーマにしたいと考えました。しかし、先生に相談したところ、きょうだい関係が性格形成にどれだけ影響を与えているか、その要因だけ抽出することは難しいのではないか、とアドバイスをいただき、「中高年のきょうだい関係とソーシャルサポート」にテーマを変更。当時は高齢者心理学には、そこまで興味を持っていませんでした。年を重ねることや“老い”というテーマは、大学生からするとちょっと遠いですよね。私もそうでした。そんなある時、転機が訪れます。大学院に進む頃、指導教授から「100歳の人に会ってみませんか?」と聞かれたんです。好奇心から「会いたいです!」と返答しました。行先は東京都老人総合研究所。日本の老年学研究の重点拠点だったんですね。そこで東京百寿者研究の研究補助をさせていただき、そこで出会った百寿者(100歳以上の人を意味する)の方々が、とても印象的だったんです。様々な背景を持たれて人生を歩まれてきているから、一人ひとり、ほんとうに違う。性格が異なることは当然ですが、今は穏やかな笑顔が魅力的な人でも、壮絶な過去を乗り越えてきた人もいて、そういった人の中の「生きぬいてきた強さ」にふれることもありました。「高齢者」という言葉で一括りにはできない、その人らしさがそこにあり、一人ひとりの性格や生き方が興味深いなと思ったんです。そこから自然と「加齢は人にどのような影響をもたらすのか」というテーマを研究するようになりました。 -
研究内容について
年をとるということは、衰えるということ?
ポジティブなことも実はあります。
生涯発達心理学、高齢者心理学を中心に研究しています。年齢を重ねることで、人の心や行動はどのように変化していくのか。特に関心を持っているのが、「その人らしさ」は人生の中でどう変わっていくのか、ということです。高齢になると、身体機能や認知機能にはどうしても変化が起こります。若い頃と同じようにはいかないことも増えていく。でも一方で、その人らしさまでが失われるわけではありません。環境や経験によって変化する部分もあれば、人生を通して比較的安定している部分もある。「変わるもの」と「変わらないもの」の両方があるところに、人間の面白さがあるように思っています。たとえば、高齢者には「ポジティビティ・エフェクト」と呼ばれる特徴があります。若い人はネガティブな情報にも敏感ですが、高齢者は無意識にポジティブな情報を優先して記憶する傾向があるんです。これは、自分自身の心を守りながら生きていくための適応とも考えられています。学生に長生きをしたいかと尋ねると、あまりポジティブではない答えが返ってくることがあります。高齢者研究というと、どうしても失われるものに目が向きがちですが、私はその中にある強みや可能性にも目を向けたいと思っています。高齢者研究を進めた先に、また長い人生を生きぬいてきた人々から伝わる強さから、私たちが生きることの意味が見出せるのではないかと思っています。
高齢者を支える家族や周囲の人たちも重要な研究対象です。修士課程では、百寿者を介護する家族の負担感について研究しました。身体的疲労度の高さに比べて心理的負担度は比較的低い、ケアがうまくいっている「サクセスフルケア」のケースがなぜ生まれるのかを、ソーシャルサポートの観点から調査。そこで見えてきたのは、実際に手助けをしてもらう「手段的サポート」ももちろん大切ですが、愚痴を聞いてもらったり気持ちに寄り添ってもらったりする「情緒的サポート」も介護者の心理的負担感を軽減するのに有効であるということでした。たとえ直接手助けができなくても、「気持ちは寄り添っているよ」という姿勢が大きな支えになるんですね。一方で、現場では、一生懸命介護している家族が「財布を盗った」と疑われてしまう「物盗られ妄想」にも直面しました。なぜこんな悲しいことが起きるのだろう。その疑問から、博士課程では高齢者の「虚記憶(False Memory)」の研究に取り組みました。実際には起きていないことを、本人の中では起きていることとして信じてしまう。その記憶の掛け違いが、時に大きなすれ違いを生むことがあります。 -
学生のみなさんに伝えたいこと
目指すべきことが最初から
すべて決まっていなくても大丈夫。
なりゆきや偶然も、人生の線としてつながる。
高齢者心理学というと、「介護」や「衰え」を扱う学問だと思われることがあります。でも実際には、それだけではありません。近年では「人生100年時代」とも言われ、高齢期は“人生の終わり”ではなく、一つの長い発達段階として考えられるようになってきています。だから私は若い人にこそ学んでほしい学問だと思っています。今の自分の延長線上に未来の自分がいる。その視点を持つだけでも、人生の見え方は少し変わるはずです。学生には、「今、全部が決まっていなくても大丈夫」とよく話します。私自身も、最初からこの道を目指していたわけではありません。パーソナリティ心理学への興味から始まり、様々な出会いとご縁をへてたどり着いた。「なりゆき」や「偶然」に見えることも、人生の線としてつながっていくことがある。だから、最短距離ばかりを考えなくてもいいと思うのです。
私の恩師は、「ハッピーエイジング」という概念を提唱されました。もともとこの概念は、年齢が上がるにつれ様々な面での自立が難しくなり、場合によっては誰かのケアを受けることが必要になったとしても、大切なのは、人から見て幸せかどうかではなく、自分自身が「幸せだ」と感じられることを意味しています。ただ、これは高齢者だけではなく、若い人にも共通する部分があると思います。また、「老年的超越」という理論では、人生の終盤に向かう中で、自分という存在を超えて社会や宇宙、自然とのつながりを感じるようになると考えられています。若い頃は、成績や進路、人との比較など、「自分」が中心になりがちです。でも年齢を重ねると、地域とのつながりや家族との時間、季節の移ろいといった、自分を超えたものに価値を見出す人も少なくありません。人からどう見えるかではなく、自分自身がどう感じるか。その主観的な幸福感こそが大切なのだと思います。
ただ、そのためには、自分で選び、自分で決めることも必要です。私はゼミの学生にも、「自分の道は自分で決めなさい」とよく話しています。卒業論文も、どんな結果になっても最後までやり抜こうねと。私自身も大学院時代、どうしても取り組みたいテーマがあったときに、指導教員に反対されても、どう説得できるか、あの手この手を考えて試行錯誤していました。時として、自分の考えをぶつけたり、壁にぶつかったりする経験がなければ、本当の意味で自信はつかない。人生は思い通りにならないこともあります。でも、その時々で自分なりの幸せを見つけながら歩んでいくことはできる。自分で選び、自分で決めながら、そのことに責任をもって、自分らしい人生を歩んでいってほしいと思います。

自分の道は自分で決める。
どんな結果でも
最後までやり抜く。
その力を育んでいきましょう。
3つのキーワード
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01アナウンス

中学・高校時代は放送部でした。もともとは音響操作の担当を希望していたのですが、「朝向きの声だから」と朝の放送のアナウンスを任されるようになりました。その後はアナウンス講座に通い技術を学んだり、劇場でのアナウンスの仕事などをしたりもしました。今では、ライフワークの一つになっています。研究でも、実験に使う刺激の音声を自分で録音したり、子どもへの本の読み聞かせや朗読ボランティアに活かしたりと、意外なところで役立っています。
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02大相撲

「好角家」の家族の影響で、大相撲を見に出かけることがあります。テレビで見るのと実際に観るのとでは迫力がまったく違う。力士同士がぶつかり合う音や会場の熱気は圧巻です。困ったときの夕食は、もちろんちゃんこ鍋(笑)。誰かのおかげでこれまで知らなかった新しい世界と出会えるのもなかなかいいものだな、と思います。
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03ぬいぐるみ

幼い頃からぬいぐるみを頂く機会が多いです。研究室には卒業生からもらったぬいぐるみもいくつか飾ってあります。「花は枯れちゃうけど、枯れないほうがいいから」と学生たちがくれたんです。中には、守護神としてくれたぬいぐるみもあります(笑)。学生とのつながりや思い出が形になった大切な宝物です。
こんなこと学べます、
ゼミ生たちの卒業論文
親の期待と居場所の心理的機能が青年期のアイデンティティに及ぼす影響/児童期の父親の関わりが大学生のソーシャルスキルや自尊心に及ぼす影響/キャラを持つことの意味とは―ソーシャルスキル、居場所感、幸福感に着目して―/HSPにとっての居場所が果たす役割とは/「ひとり時間」と幸福感の関連―本来感と孤独感に着目して―/罪悪感が自己認識に及ぼす影響/ルッキズムと購買意欲の関連―自意識と自尊感情に着目して―/青年期における自信が援助行動の生起に及ぼす影響―自己効力感と共感性からの検討―/きょうだい関係がソーシャルサポートに及ぼす影響/化粧行動と自己に対する捉え方との関連
著書・論文
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老年臨床心理学ハンドブック
[著書]共著/福村出版/2025
高齢者に対するステレオタイプとエイジズムについて、内閣府の意識調査などを取り上げながら、その現状と背景について概説した。
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心理学の世界 (現代に活きる心理学ライブラリ:困難を希望に変える心理学)
[著書]共著/サイエンス社/2020
生涯発達心理学の考え方、各発達段階の特徴、認知機能や社会性の発達、自己と他者の関係のあり方と心理的発達、高齢者の心理的課題などについて取り上げた。
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高齢者の記憶錯誤:虚記憶およびメタ記憶からの分析と精神的健康との関連
[論文]共著(筆頭)/体力科学/2020
高齢者の記憶の錯誤について、虚記憶とメタ記憶の観点から考察し、さらに精神的健康との関連について言及した。












