心理学を学んで、
自分の知らない自分に
出会ってみませんか?
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PROFILE

Yumiko Iume

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お茶の水女子大学生活科学部人間生活学科発達臨床学講座卒業。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程単位取得退学。精神科クリニックや小児科にて臨床心理士として勤務。相模女子大学、青山学院女子短期大学の非常勤講師を経て、2010年4月より東京未来大学こども心理学部助教。2015年4月よりこども心理学部講師。2018年4月よりこども心理学部准教授。臨床心理士。公認心理師。

専門:

発達臨床心理学

主な担当科目:

親子関係の心理学、心理学概論(こころの理解)、心理的アセスメント など

  • 心理学に興味をもったきっかけは?

    「困った時に笑うよね?」
    先輩の一言に、ドキッとした。

    実は自分のことを話してくださいと言われると、何を話したらいいんだろうと戸惑ってしまいます。子どもの頃から、自分のことを話すのは得意ではなく、本心を隠してしまうようなところがありました。私は3人きょうだいの一番上。姉として、いつの間にか、「良い子」をやらなきゃいけないと思っていたのかもしれません。そんなある日、中学校で先輩から、「困った時に笑うよね?笑ってなんとかしようとしているよね」と言われたんです。ビックリしすぎて頭が真っ白になりました。怖いくらいの図星。人と関わることに対して、引っ込み思案になっていること。波風立てないようにと笑ってごまかすこと。自分でも言語化できてなかった自分の弱さを突きつけられた気がしました。隠していたつもりが、見抜かれていたんです。先輩にとっては軽い一言だったかもしれませんが、私にとっては衝撃の重い一言。この小さな出来事をきっかけに人との関係や心の動きに興味を持つようになりました。

    思春期って何かと悩むことが多いですよね。例えば、小学生のときは気にならなかったことが気になったり、部活動や女子同士の人間関係を難しいなぁと思ったり…。人の心って本当に難しい。漠然とですが、心理学に興味を持つようになりました。ところが高校2年の時に、心理系の大学・学部に進みたいと担任の先生に話すと「心理学を学んでも就職には直結しないよ」と言われました。当時は心理学=カウンセラーというイメージが強く、進路選択の幅が狭いと思われていたんです。心理の専門職がどのようなものか、あまり知られてはいませんでしたし、私自身も具体的にイメージできてはいませんでした。でも、心理学を学びたい!悩みもしましたが、就職に直結しなくても、まずはその世界に入ってみようと思いました。けれども、大学に入ってみて、いい意味で高校生のときに抱いていたイメージは覆りました。就職に直結しない、と散々言われましたが、先輩たちの中には、非常勤ではあるけれども、心理援助職についている人がけっこういました。大学に入って、具体的に将来のことを考えることができるようになりました。大学では、発達心理学や臨床心理学を中心に学びました。心理学を通して人の成長や人生を考えるわけです。中学の時に指摘された「困った時に笑う」というクセは、親との関係や家庭内の環境とどう関係していたのだろう?などと、自分についても考える機会も多かった。自分を知ると、悩みやモヤモヤも整理されて、これからのやるべきこともクリアになる。大学に入って、心理学ってこんなにも自分のためになるんだ!とビックリしたことを覚えています。

  • 研究内容について

    他者との関係づくり。
    その根っこにある、親との関係の形。

    私が専門としている臨床心理学は、心の悩みや病い、障害などを抱えた人を理解し、支援することを目的とした心理学です。人の心を支援する方法はいろいろあります。アプローチの方法は1つではありません。たとえば、カウンセリングをする上で幼少期の親との関係や環境などの過去の出来事を扱う考え方。一方で、幼少期よりも現在置かれている状況を重視する考え方もあります。私はどちらかというと前者。幼少期の親との関係性、児童期・思春期における様々な体験、親子関係の築き方などを重視しながら臨床・研究に取り組んでいます。大学院時代、臨床心理士の資格を取るための臨床実習での経験が私の胸に深く刻まれています。精神神経科の思春期外来の実習で、様々な心の病を抱え、苦しい思いを訴える子どもたちの面接に立ち会いました。心の訴えは症状として体にも現れる。様々なバックグラウンドを抱えた子どもたちの話を聞くと、自分のこれまでの経験や価値観で彼・彼女たちを捉えてはいけないということが痛いほどわかる。それまではどこかで自分の延長上で相手のことを捉えていたんだなと気づき、反省しました。それは、臨床心理に携わる重み、カウンセラーという仕事の重みを感じた瞬間でもありました。

    私は大学院時代、人との関係性の持ち方のパターン、すなわち「対象関係」について研究していました。「対象関係」とは、皆さんの心の中にある人間関係のイメージのようなもので、私たちが人間関係を営む上で重要な役割を果たしています。この対象関係は、乳幼児期に、母親など周囲の親しい大人との関係の中で形作られ、その後の人間関係において修正されていきます。つまり、健康な心の育ちだと柔軟にパターンを増やすことができるのです。ところが、幼少期に不適切な心の育ちを経験した子どもは、対人関係を上手に構築できず、生きづらさを抱えることがあります。例えば、幼少期に親から虐待を受けたり、極端に支配的に扱われてきた子どもは、常に見捨てられる不安を感じながら親の顔色をうかがって育つことになります。大人になって、友人関係や恋人関係の中でも、見捨てられる不安を感じると相手に過度に依存したり、逆に自分から先に関係を切ってしまったり、不安定な人間関係になることがあります。このように、幼少期の経験はそれほどまでに本人の人生に深い影響力を及ぼす。心理学を研究するということは、こうした事実に向き合うことでもある。大学で講義をする際も、軽く扱えるテーマではない場合が多いので、間違った伝わり方にならないように、言葉選びなども意識して心がけています。

  • 学生に伝えたいこと

    心理学を学ぶと、
    自分を客観視する術が身に付く。
    将来を考える時期だからこそ、知ってほしい。

    皆さんは、心理学にどのようなイメージを持っていますか?授業でたずねると、「人の気持ちがわかるようになる」「人間関係が円滑になる」と多くの学生が答えます。もちろんそれも大事な側面ですが、私は、「自分をもっと知ることができる」学問であることにも注目してほしいなと思っています。実際に心理学を学ぶと、学んだことと自分の経験がリンクする瞬間が何度も訪れます。心理学の知識を得るということは、自分を客観視する術を得るということ。たとえば、何か嫌なことがあったとして、なぜ自分は「嫌だな」と感じているのかと考えられれば、負担を減らせるように対応できる。私自身も自分のことを話すのは苦手ですが、それを自覚しているので、事前に準備をして負担を減らす努力ができる。不思議なもので、悩みって解決しようとすればするほど余計に苦しくなってしまうもの。悩みをなくさなきゃいけないと思いがちなんですが、うまく付き合いながら一緒に生きていくことの方が実は重要なのです。カウンセリングも同じです。悩みを全てなくしたいと思うと行き詰まってしまうのですが、「専門家と悩みの対処方法を考える場」と認識してもらえるとより良い方向に向かうことができる。

    大学での4年間は、アイデンティティを形づくる大切な時期です。自分がどんな人間なのか、自分を知ることがとても大事になります。これからの将来を決める進路選択・就職活動もありますよね。これから何をしたいのか。どんな自分になりたいのか。どう成長していきたいのか。未来に向かうための力を養う時期でもある。だからこそ、自分が何が好きで、何に興味があるのか。どんな人間なのか。自分に興味をもって、知ってほしいと思います。自分も知らない自分に出会うと、新しい何かが生まれるかもしれない。ぜひ、あなたの人生に心理学を活用してください。

悩みは無理に解決しなくていい。
悩みとうまく付き合う術を学べばいい。
心理学はあなたがあなたらしく
生きるための学問です。

Humans3つのキーワード

  • 01子育てと心理学

    イヤイヤ期や反抗期という状況を理屈では理解していても、問題がなくなるわけじゃないのが子育て。カウンセラーの資格を持っていてもぶつかる時はぶつかります。でも、うまくいかなかったときに、「こんな言い方をしたのが良くなかったな」「これは私が先回りしすぎてるよな」と振り返ることができるのは、心理学を学んでいたから。子育てに悩んで、心理学的な気づきをもたらすこともあれば、今まで研究してきたことが子育てに役立ったりする。やっぱり、面白い学問だなと思います。

  • 02ベランダガーデニング

    家のベランダで緑を育てています。今年は春先にミントとルッコラの苗を手に入れ、スイッチが入りました。ハーブ類は手がかからず、料理にも使えるのでとても育てやすいです。バジル、イタリアンパセリ、しそ、オレガノ、と数も増えてきました。栽培へのやる気にはムラがあって、頑張りたい時期もあれば少し離れる時もある。今は3年ぶりの「頑張りたい期」です(笑)。最近は花にも挑戦中。植物は手をかけるほどきれいな花を咲かせてくれます。毎日夕飯後、ベランダに出てお世話をしている時間が私の一日の癒しタイムです。

  • 03原風景

    親の実家が長野県で、子どもの頃は毎年夏休みに長野県の小海町に行っていました。小海町は自然がとても美しい田舎で、背景美術が特徴的な映画『君の名は。』の監督、新海誠さんの故郷でもあります。夏でも涼しく、子どもの頃は山道を散歩して木苺を摘んで食べたり、岩から染み出てくる湧き水を飲んだり…、8月13日の夕には、迎え盆といって、皆で提灯に火を灯して、お墓参りをします。幼少期の記憶の中の風景のことを心理学用語で「原風景」と言うのですが、小海町は私の大切な原風景です。

こんなこと学べます、
ゼミ生たちの卒業論文

幼少期の愛着が友人関係に及ぼす影響/現代の学生の結婚観・子育て観について/両親の夫婦関係が子の心理的発達に及ぼす影響について/母娘の関係性が自立や将来のライフイベントに与える影響/SNS依存が大学生の対人関係に及ぼす影響/部活動における対人関係と自尊感情との関連について/大学生のADHD傾向とパーソナリティ特性及びレジリエンスの関連/子育て期の母親が体験する自身の乳幼児期についての語りへの一考察—世代間伝達の観点から—/愛着スタイルが恋愛の捉え方に及ぼす影響

など

著書・論文

  • 部活動指導員ガイドブック 基礎編・応用編

    [著書]共著/ミネルヴァ書房/2020・2022

    近年、学校部活動を支える人材として注目されている「部活動外部指導員」。学校内で指導するためには、指導する内容の知識だけでなく、学校という組織や子どもの発達に関する知識が必要である。本書はこれらを分かりやすく解説した。

  • 保育と子ども家庭支援論

    [著書]共著/勁草書房/2020

    少子化や地域社会の変容など、子どもと子育て家庭を取り巻く環境は大きく変化している。本書は、保育士として必要な子ども家庭支援の各領域の意義・内容・課題や今後の動向について、体系的に学べるテキストである。

  • COVID-19禍における遠隔授業が大学生のメンタルヘルスに及ぼす影響

    [論文]共著/応用心理学研究 48 (3), 149-157./2023

    COVID-19禍の大学生のメンタルヘルスについて、オンライン調査にて検討した。対面授業が多いほど学業へのモチベーションが高く、コミュニケーション機会の減少を感じる人ほどストレス認知や今後の不安が高くなっていた。

研究者詳細

Humans