生徒と先生。子どもと親。
人間のメカニズムは
相互作用だから面白い。
生徒と先生。子どもと親。
人間のメカニズムは
相互作用だから面白い。

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PROFILE

Shinichi Tsukamoto

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1986年3月立教大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程後期課程単位取得退学、博士(心理学)。立教大学助手、上越教育大学助教授、立教大学文学部教授、同現代心理学部教授を経て、2022年4月立教大学名誉教授。この間、総長室長、副総長、現代心理学部長、学校法人立教学院評議員、理事、放送大学、大東文化大学、東京女子大学、千葉大学講師(非常勤)を歴任。同年東京未来大学教授、副学長。2024年4月より東京未来大学学長、学校法人三幸学園理事、日本応用心理学学会理事。

専門:

発達心理学、教育心理学

  • 心理学への興味のきっかけは?

    親戚一同、みんな教師。
    教師にだけはなるまいと思った。

    両親、祖父母、叔父叔母、みんな教師。正月に親戚が集まると、幼稚園教諭から大学の教員まで先生がズラリと揃う。そんな家で育ちました。だから親戚たちは私のことを「伸ちゃんは教師に向いてるよ」なんて言いがちなんですが、それが本当に嫌でした(笑) 。絶対に教師にだけはなるまい。ずっとそんな気持ちで過ごしていました。ところが、血は争えないもので子どもに関してはずっと興味があった。子どもが育つプロセスって興味深いなと。だから、子どもの発達の過程やメカニズムを学べる学問があると知った時は嬉しかったですね。それが発達心理学との出会い。大学では文学部心理学科に進みました。

    心理学といえばカウンセラーなど臨床心理学を思い浮かべる人が多いと思いますが、他にもいろんな領域があるんです。大学で私が夢中になったのは、人間や動物の行動のメカニズムを研究する実験心理学。生まれたばかりのマウスをつかって、普通の明るい環境で育ったマウスと、完全暗室で育ったマウスを比較して、視知覚の発達についての実験をしました。人間で実験するわけにはいかないのでマウスを用いるんですね。実験や調査、統計データの分析などを通じて、人間の行動や心の動きの原理や法則性を見出す。心理学にもこんな理系的なアプローチがあるということも新鮮でしたし、人間が成長する過程での心の発達や、そのメカニズムが解明されることそのものが面白いと思いました。

  • 研究内容について

    現役の教師の前で教壇に立った経験が、
    教育心理学の研究を深めてくれた。

    本来の興味である人間の子どもについて、もっと深く学んでみたいと大学院へ。子どもの「自己統制」に興味を持ちました。自己統制とは、我慢したり、頑張ったり、あきらめたり、自分で自分をコントロールする力のことです。自己統制にはいろいろな定義があるのですが、「欲求」と「行動」の関係で考えるとわかりやすいと思います。あることを「したいか」「したくないか」とそのことを「するか」「しないか」の組み合わせを考えると「したいからする」、「したいけどしない」、「したくないけどする」、「したくないからしない」の 4 つに分類できますが、2 番目と 3 番目が自己統制です。このような自己統制力がどのような環境で育つのか、自己統制力が子どもの活動にどのように影響するのか、といったことを 幼稚園児から小学生の子どもたちを対象に研究してきました。たとえば、ある子どもが小さな子が泣いているのを見て、自分が食べたいお菓子をあげる。これを援助行動と言いますが、このような援助をするためには、自分の「食べたい」という欲求を抑えることが必要で、人を助ける行動の基礎には、まず自分をコントロールする力、自己統制力が必要だということです。私自身の幼少期ですか?それが良い子だったんですよ。教師だった両親は「良い子に育てよう」という意識が強く、我が家では我慢することが美徳でした。教師的な価値観ですね。それに対して、私自身も反発しなかったのですが、教師に背を向けたのは、その反動だったのかもしれないなと今では思います(笑)。

    私のもう一つの専門が、教育心理学。ターニングポイントになったのは、現役の小中高校の先生方が大学院で研修する場としても有名な上越教育大学への赴任です。当時、私は30代で駆け出しの助教授。学生は現役バリバリの経験豊富な先生方。教職経験のない私に講義ができるのだろうかと戸惑いました。中には校長先生までいらっしゃる。表面を取り繕った生半可な言葉は見透かされてしまいます。悩んでいたある時、人生の大先輩である学生の方からこんな言葉をかけてもらったのです。「現場で役立つ便利なノウハウを教えてもらおうとは思っていません。塚本先生には、自分たちが現場で身につけた知識や経験則の裏側にある学術的な理論や考え方を教えていただきたいんです」 。ハッとしました。教師と学生の関係は上下ではない。私は教師という役割をきちんと捉えられていなかったと反省すると同時に、その役割の奥深さに気づきました。実践を通して経験則を積み上げてきた先生方と、研究を通して理論を探求してきた自分。違う経験、違う視点を持つもの同士だからこそ、化学反応が起きるかもしれない。理論と実践の融合が、その後の研究を深めてくれました。教師と子どもがどんな関係を持ったときに、子どもが学校やクラスに適応するようになるのか。どんな学級経営が子どもを伸ばすのか。教師はどんなストレスを抱えているのか。教師自身の成長・発達。私の方がたくさん学ばせてもらった、本当に貴重な5年間でした。

  • なぜ東京未来大学へ?

    「理論と実践」への本気度。
    他にない独自のユニークな教育システム。

    教育心理学においては2つの柱で研究をおこなっています。一つは教師と子どもの関係。もう一つが教師の力量についてです。たとえば、教師が「子どもをどう理解しているか」ということが、教育現場でとても重要なんです。それは、どんな声をかけるか、どう接するかというコミュニケーションの基盤になるからです。しかし、小学校の場合だと35人前後の子どもを一人で担任するわけですから、「この子はこんなタイプ」とある種のフレームにはめるとやりやすかったりする。このように人を理解するためのフレームを専門用語で「認知枠」と呼びます。「認知枠」という視点から教師の力量を考えるとき重要なのは「認知枠」の「幅」と「柔軟性」です。「認知枠」の「幅」とは子どもを理解する視点のレパートリーのことですが、たとえば「良い子」か「悪い子」かといった 2分法で子どもを理解するような非常に「幅」の狭い「認知枠」しか持っていなければ、多様な子どもの特徴を正確に理解することはできないでしょう。また、一度「悪い子だ」と理解してしまうと、これと矛盾するような出来事がいくらあっても変えることをしないといった「柔軟性」を欠いた「認知枠」では、日々発達する子どもを、的確にとらえることはできません。子どもは日々成長しているのに、教師が古い「認知枠」で見続けていたら、指導やコミュニケーションにズレが出てきますよね。だから、優れた教師には、幅が広く柔軟な「認知枠」が必要なのです。また、子どもも教師のことを見ています。「先生、私のこと見てくれているな」と感じると、期待に応えようとがんばる。これを「期待効果」と言います。一方で「悪い期待効果」もあります。「どうせこの子はダメだから」と見てしまうと、その子どもは「先生が好きじゃない」「学校が楽しくない」となってしまうというものです。教師と子どもの関係は、相互作用なんですね。実は、これらの考え方をよく体現している教育システムだと感じたのが、東京未来大学のキャンパスアドバイザー制度なんです。

    東京未来大学にはキャンパスアドバイザー(以下、CA)という職員がいます。学生のチャレンジを見守り、叱咤激励したり、背中を押したりする存在。社会に出る前の大学生の時期は自分を知ることがとても大切です。自分を知るためには他者との深い関わりが不可欠。CAの存在を通して、自分を知り、自分で階段を上れるようになっていく。さきほど認知枠と期待効果の話をしましたが、CAの日々の行動にはこれらが組み込まれている。また、入学前から卒業後まで一貫してサポートするというエンロールメント・マネジメントもそうですね。日本の大学ではある種の理想として掲げられることが多いシステムですが、東京未来大学は実践している。本気度が凄いと思います。未来大とのつながりは大学時代の先輩である学長の角山剛先生とのご縁が最初のきっかけですが、こうして可能性を秘めている大学に関わることができて嬉しく思っています。先生なんか絶対になるもんかと先生に背を向けた私でしたが、こうして先生と呼ばれる人間になった。人とのつながりやご縁を大事にしながら、キャリアの集大成として、学生と大学の発展のために尽くしていきたいです。

親との関係。先生との関係。
人との関わりのなかで、人は育つ。
自分のこともわかるようになる。
自分が自分らしく前に進める道を
選んでほしいと思います。

Humans3つのキーワード

  • 01趣味は芸術系

    子どもの頃から芸術分野が好きでした。音楽はクラシックが好きで、若い頃はマーラーやブルックナーなど、後期ロマン派の壮大な曲ばかり聴いていました。大学時代は陶芸部に所属して、ずっと粘土を練っていました。今でも陶器やクラシックは好きで、展覧会やコンサートに行くことは楽しみの一つです。

  • 02隣の県なら通勤圏内!?

    私が新潟県の上教大に赴任した際、妻は東大の院生だったので2年間別居生活に。修了の際、富山の大学のポストを紹介された妻。妻から相談された私は「富山なら新潟の隣だから通えるだろうし、いいと思うよ」と私の住んだことのある神奈川と東京の距離感のイメージで気軽に答えてしまいました。なんとバスと電車を乗り継いで4時間近くかかることに気づいたのは妻の着任後…。またまた別居。妻に申し訳ないことをしたと、今でも思っている出来事です。

  • 03愛車の思い出

    車が好き。天気がいい日は江ノ島まで、愛車のBMWをビューンと飛ばすと気持ちがいい。性能よりも見た目重視ですが、それが災いしたこともあります。新潟に住むことになった時、何も知らずシルビアという車高が低い車で行ったところ、雪に埋もれました…。反省して車を買い替えた2年目。雪に強いフォルクスワーゲンのゴルフを買ったのですが、格好つけて車体にスポイラーをつけたところ、再び雪に埋もれるハメに…。

著書・論文

  • 発達と学習の心理学

    [著書]共著/ナカニシヤ出版/2019

    第4章児童期を執筆。思考の発達をピアジェの発達説から、記憶の発達をメタ記憶を中心に、道徳性の発達をコールバーグの発達説から、仲間関係の発達は友人関係概念の発達を中心に、また、自己と自己統制の発達は満足遅延、誘惑への抵抗を中心に論じた。

  • 小中学校教師のバーンアウトと教師ストレッサー、離職願望の関連

    [論文]単著/産業ストレス研究 第28巻第2号/2021

    教師用バーンアウト尺度を構成してその因子構造を明らかにするとともに、共分散構造分析により、教師のストレッサー、バーンアウト、離職願望の因果関係を明らかにすることを目的として、小中学校教師200名を対象に研究を行った。

  • ソーシャル・サポートと母親の愛着スタイルが育児ストレスに与える影響

    [論文]単著/応用心理学研究 第46巻第3号/2021

    幼稚園児の母親137名を対象に、母親自身の愛着スタイルの違いは、直接育児ストレスに影響すると同時に、ソーシャル・サポート認知を媒介しても育児ストレスに影響を及ぼすとのモデルを設定し、共分散構造分析による検討を行った。

  • 教師の指導態度、学級集団構造、親の養育態度が児童の共感性に及ぼす影響

    [論文]共著/生徒指導学研究 第17号/2018

    学級集団における関わりと共感性の発達との関連を明らかにするために、教師の指導態度が学級集団構造を媒介して児童の共感性に影響し、同時に親の養育態度も影響するとのモデルを設定し、小学校4・5年生を対象に因果分析を行った。

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