子どもの心を理解すること。
簡単じゃないからこそ、
心理学という学問があります。
子どもの心を理解すること。
簡単じゃないからこそ、
心理学という学問があります。

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PROFILE

Megumi Kawaguchi

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幼稚園教諭として勤務後、北海道大学大学院教育学院修士課程修了。大原学園大原医療福祉専門学校講師、足利短期大学講師、札幌大谷短期大学講師、駒沢女子短期大学講師、駒沢女子短期大学准教授を経て、2020年4月より東京未来大学こども心理学部こども心理学科講師。

専門:

発達心理学、感情心理学

主な担当科目:

乳幼児心理学、心理学概論(こころの形成) 、人間関係指導法 など

  • 保育・教育に興味を持ったきっかけは?

    子どもや先生方との出会い、
    自閉スペクトラム症の方との出会い。
    出会いがすべてのきっかけです。

    北海道で生まれ育ちました。冬になると隣のアパートの2階の廊下から雪が降り積もった畑に飛び込んだり、学校が終わると近所の友達と一緒に秘密基地に直行したり、遊ぶのが大好きな子どもでした。勉強にはさほど興味なし(笑)。 高校2年生になっても進路すら考えていなかったので、隣のクラスの先生が心配してくれて「保育園に見学に行くけど、一緒にどう?」と声をかけてくれました。実はそれが子どもに興味を持ったきっかけです。子どもたちと遊んだのはわずかな時間だったのですが、本当に楽しくって。子どもってなんて魅力的な存在なんだろうと衝撃が走りました。幼稚園教諭になる!という目標ができてからは勉強も頑張るように。遅いスタートでしたが、先生たちが熱心にサポートしてくれたおかげで志望校に合格。無条件に私の可能性を信じ、無条件に遅くまで勉強を教えてくれた、たくさんの先生…。どんな大人に出会うと子どもはhappyか…。大人、先生の存在の大切さをこの時に考えさせられました。そして、私も同じように子どもにとってhappyな先生になろうと心の中で誓いました。

    大学時代にもう一つ大きな転機がありました。実習先の福祉施設で重度の自閉スペクトラム症の方に出会ったことです。ご家族もいらっしゃらず、生涯施設で過ごすことになる60代の男性。人と出会うことの意味、生きることの意味、そして、心とは、感情とは…ということを深く考えるようになりました。人と向き合う職業につくのなら、人をもっと深く知らなければいけないと痛感したのです。その後、ボランティアとして施設に通うようになり、20代の自閉スペクトラム症の方との交流を通して、言葉やコミュニケーションに興味を持ちました。卒業論文のテーマは「自閉スペクトラム症の語用論」。福祉の道に進むことも真剣に考えましたが、すべての人の土台になっているのが「子ども」だと改めて感じたこともあり、幼稚園教諭の道を選びました。

  • 研究内容について

    大人の言葉は、
    子どもの心にどんな影響を与えると思いますか?

    幼稚園教諭になり保育・教育の現場に身を置くようになると、視界がガラリと変わりました。担任としてクラス全体に責任を持つわけですが、一人ひとりの発達特性はさまざま。発達の著しい子どもたちと日々を共にすればするほど、自分の知識が子どもの発達にどう影響するのか改めて学びたいと思うようになりました。クラスに感情の発達が遅れている子どもがいて、私に知識があればもっとサポートできるんじゃないかと感情発達に興味を持つようになったことも大きかったですね。そこで思い切って働きながら通信制の大学で学ぶことにしたんです。大学では深く学ばなかった生命科学や分子生物学を学んだことで、保育・教育の現場まで届いていない研究が世の中にはたくさんあるんだと実感。もっと学びたいという気持ちが強くなり、退職して大学院へ進みました。大学院では実験心理学の研究室に所属。そこは人の認知や注意機能を脳波、事象関連電位で測定し、分析するといった研究室でした。大学院入学時は自閉スペクトラム症の感情について研究したいと意気込んでいましたが、神経美学に心惹かれ、視覚と感情の関連について興味を持つようになりました。それが子どもではどうなのか、色にどんな感情をみるのか、調べるようになりました。ちなみに、美しいと感じることが善悪の判断や道徳心、思いやりにつながるという研究結果もあります。乳幼児の感情についての研究は、奥が深く夢中になりました。

    現在は、乳幼児に対する言葉刺激、具体的には大人の発する言葉が子どもの反応や学習に及ぼす影響、乳幼児への効果的な言葉かけについて研究しています。たとえば子どもの行動を訂正し、主体的行動を促すためにはどのような言葉かけが効果的だと思いますか?よく大人は、「ダメだよ!」と行動を禁止するような言葉をかけることがあります。その他にも、「花子ちゃん…(ジロッ)」と名前を呼んでみたり、「それはいいこと?」と確認したり…。共感、誘導、命令など様々な分類があるのですが、どのような刺激が効果的か、学習につながりやすいのかといったことを研究しています。一般的に、これらの答えは親や保育者がそれぞれ独自の経験則として持っているものなのですが、学術的に見てどうなのかと。根拠となるメカニズムやロジックを研究して、学生にも、保育・教育の現場にも還元できたらと日々取り組んでいます。

  • 教育ポリシーについて

    4年間で保育スキルだけでなく、
    心身の発達の理論を学んで、
    一人一人の子どもの心と行動を見ようとする保育者になってほしい。

    2020年から東京未来大学で乳幼児心理学などの授業を担当しています。私が教える相手は、未来の保育士や幼稚園教諭。一人一人の学生の先には、未来の子どもたちがいるんだと思うと気が引き締まります。子どもは10年後、20年後、さらに先の社会をつくる存在です。私が学んできたこと、研究してきたことが一人でも多くの学生に伝わり、その学生が保育者となった時、子どもたちの心に素敵な種をまいていってほしい。そして、より良い社会につながることを願いながら指導しています。

    せっかく四年制大学で学ぶのだから、知識やテクニックだけじゃもったいないですよね。子どもの心や発達についてしっかり学んで、子どもの行動の意味や意図を知ろうとする保育者になってほしい。それこそが、一人一人の子どもの心に寄り添う保育だと私は思います。未来大の学生たちは、そこを理解しながら学ぼうとしてくれているので本当に嬉しいですね。今、授業もゼミも本当に楽しいです。卒論に悪戦苦闘している様子も、一足早く卒論を完成させた学生が他の学生に指導している様子も、休み時間のとりとめのない話も、全部面白い。卒論提出後は研究室がガランと静かになっちゃって寂しいくらい(笑)。私自身、まだまだ未熟で発展途上。だからこそ、私も学生に負けないようにたくさんチャレンジしていきたいと思います。

子どもの心は
どんな行動に表れる?
子どもの心と行動を
しっかり見つめることができる
保育者を増やしていきたい。

Humans3つのキーワード

  • 01遊び大好きin北海道

    本当に遊ぶのが大好きな子どもでした。北海道で生まれ育ったので雪の遊びはもちろんのこと、畳の隙間に入っているワラジムシをほじくり返してみたり…いろんな遊びにチャレンジする好奇心旺盛なタイプでした。勉強は得意じゃなかったけど、気になったことをトコトン追究するところは今も変わっていません。

  • 02「一期一会」ということば

    高校生の時、当時の成績では無謀だと言われるような大学に行きたいと言った私に対し、毎日添削など個別指導までしてくださった先生方。就職後も働きながら学ぶという道を応援してくださったのも大学時代の先生。無理だと言わずに一緒に目標を追いかけてくださった。無条件に私を信じてくださったから、私も頑張ることができた。子どもたちとの出会いも、実習先での自閉スペクトラム症の方との出会いも、一つ一つが今の私をつくっている。人との出会いが私の人生の宝物です。

  • 03ピクニック

    休みの日は近所の公園にピクニックに行くのにハマっています。持っていくものはレジャーシートと、かんたんなおつまみやおかず、ちょっとだけワイン(笑)。川沿いも気持ちいいし、季節の花が咲いている公園もいい。行き当たりばったりで探索できたりもして、のんびり自由に楽しめるところが気に入っています。

こんなこと学べます、
ゼミ生たちの卒業論文

運動時の音楽が爽快感や疲労感に及ぼす影響ーテンポの違いによる比較ー/子どもの時の運動・スポーツ経験と現在の運動有能感の実態との関係/「諦める」ことに対する抵抗感の変化/幼少期の音楽経験がその後の音楽聴取や心理的側面に与える影響/青年期の趣味と選好がストレス緩和に与える影響/千と千尋の神隠しの世界観ー子どもと大人の違いー /こどもごごろとおとなごころーこころの移り変わりの発達的変化ー/家族との思い出ー記憶に残る思い出とは何かー/子どもの好みに及ぼす親の影響/月経時におけるハンドマッサージの効果ーマッサージ中の体勢の違いによる効果の出方についてー

など

著書・論文

  • 保育の心理学 育ってほしい10の姿

    [著書]編著/中山書店/2022

    近年の研究で示唆されている内容を盛り込んだ心理学×保育学の一冊。子どものこころや発達を理解するためのヒントが沢山詰められた、理論と実践の両方から丁寧にまとめられた書籍。

  • 子育て支援

    [著書]共著/中山書店/2020

    子どもとその親をしあわせにつなげていく子育て支援。この子育て支援を福祉、保育、心理、文化などさまざまな視点から捉えまとめた一冊。理論のみならず、実際にどのような対応ができるか、具体的なヒントを提供している書籍。

  • ネガティブ感情を喚起する形態特徴ー青年と幼児を対象とした検討ー

    [論文]単著/感性工学会、日本感性工学会論文誌/2019

    シンメトリパタンや黄金比などは多くの人に美しいという感情を与えることは有名だが、発達を含めた普遍的な視覚刺激特徴と感情との関連についてわかっていないことが多い。本研究は、子どもも大人も感情が喚起する視覚刺激特徴を明らかにした。

研究者詳細

Humans