小さなメッセージに
気づいていますか?
漫画やアニメの中にもある。
あなたの大切な人にもある。
小さなメッセージに
気づいていますか?
漫画やアニメの中にもある。
あなたの大切な人にもある。

SCROLL

PROFILE

Makoto Suda

詳細をみる

東京未来大学こども心理学部教授。慶應義塾大学文学部心理学専攻卒業。慶應義塾大学大学院社会学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学。修士(社会学)。慶應義塾大学医学部非常勤講師、慶應義塾大学文学部非常勤講師、武蔵野大学通信教育部専任講師等を経て現職。警察本部で非行少年・犯罪少年のカウンセリング、精神科クリニックで思春期・青年期のカウンセリング等に従事。近年は、不登校、ひきこもり、発達障害、いじめ、子ども・若者の自殺等について、教職員や市民を対象とした予防のための心理教育に力を入れている。臨床心理士、公認心理師。

専門:

臨床心理学、コミュニティ心理学、非行心理学、青年心理学、描画法

主な担当科目:

教育・学校心理学A、学習・言語心理学A、心理的アセスメント、心理的アセスメント上級

  • 心理学に興味を持ったきっかけ

    ゴーギャンの人生を想像した。ゴヤの絵に心が震えた。
    美術と心理学はつながっているのかもしれない。

    絵が大好きだけど、才能がないことは自覚していました。進学情報誌を読み漁り、実技試験のない美術系の専攻を必死で調べて見つけたのが、東京藝大の当時の美術批評のコース。受験したいと先生に伝えたところ、先生たちは揃いも揃って猛反対。「美術批評で食べていけるのか?」と心配されました。それでも、美術系を諦めたくなかった。ふと、自分が絵画を見る時に、作者の心理状況や人生を想像するのが好きなことを思い出しました。たとえば、ポール・ゴーギャン。自殺未遂をする直前に描いた作品には死の影が表れているんですよ。また、絵画を鑑賞した時に、自分の心が揺れ動くことにも興味があった。聴覚を失ったゴヤの絵画は、恐怖そのもの。モネなどの印象派の絵画を見ると、気持ちが落ち着いたりする。なぜだろうとずっと不思議に思っていました。美術と心理学はつながっているのかもしれない。少しでも美術に近いことを学びたいと思ったことが、心理学に興味を持ったきっかけです。

    もっと遡れば、小学校時代のことも影響しているかもしれません。放課後、教室で絵を描いたり、児童向けの『レ・ミゼラブル』とか『嵐が丘』を読んだりしていました。「なぜみんなと一緒にドッジボールをしないのか!」とよく先生から怒られていました。図画の時間に、自分で気に入った絵を、先生に「それはおかしい」と言われて勝手に描きかえられてしまったことも。給食が食べきれず「食べ終わるまでそこにいろ!」と怒られて箸を握りしめてうつむいている僕たち。手をぐちゃぐちゃにしながら食べ残しをこっそり体操着袋に突っ込む友人を見て、心が痛くなった。閉鎖系のコミュニティでは、こんな理不尽なことが起こる。誰かに助けてほしかった。でも、子どもは「助けて」という援助要請ができないんですよね。中学では一人の先生ではなく、それぞれの科目の専任の先生が教えてくれるようになって、開放系コミュニティに近づき、ちょっと自由になった。高校はもっと自由、大学はもっともっと自由。歳を重ねるごとに、自分のやりたいことをやれるようになって本当に嬉しかった。こうした経験が、専門である臨床心理学、コミュニティ心理学を研究する上での土台になっているように思います。

  • 研究内容について

    不登校、非行、子どものうつ。
    思春期という発達段階との関係。

    大学の心理学専攻は、ハトやラットを使った実験心理学。1学年25人の少人数教育。5名ずつ5グループに分かれて、実験や課題に取り組みました。2年近く同じグループで活動するのですごく仲良くなるんです。先生とも同級生とも距離が近い。近いと議論も研究も深くなる。だから面白い。この経験が、現在の教員としてのスタイルにつながっています。卒論のテーマは保健室登校。当時、不登校がすごく話題になっていました。臨床心理士をスクールカウンセラーとして学校に配置しようという動きが出始めた頃でした。不登校の生徒に話を聞きに行きたいと教授に話したところ「それは非常に難しいぞ。生きづらさを抱えている子どもたちなんだから」と止められました。でも話を聞いてみたい。そこで母校の養護の先生のところに行き、研究内容を説明。近隣中学の先生方を紹介してもらい、生徒に会うことは難しいけれどアンケート調査ならと、協力いただけることになりました。生徒にいくつかの単語を提示。その単語同士のイメージが近いかどうか。多次元尺度構成法を使いました。当時まだ日本語の解説がなくて、教授に渡された英語の本をうなりながら読みました。統計ソフトもない時代だったので、FORTRAN(フォートラン)というコンピュータ言語でプログラムを組みました。結果はどうだったか。わりときれいな結果が出たんです。保健室登校の生徒はそうでない生徒と比べて明らかに、「養護教諭」と「お母さん」を近く、「保健室」と「家」を近くイメージしていることがわかりました。これらの結果を養護の先生方に報告したところ、保健室の実態を改めて認識する内容だったそうで、「腑に落ちました」といったコメントをいただき、取り組んでよかったと心から思いました。

    現在の専門は臨床心理学、コミュニティ心理学なのですが、特に思春期・青年期に焦点を当てて研究を進めています。心身が大きく変化するこの時期を、平穏に過ごす子どもがいる一方で、壁にぶつかって前に進めない子どももいます。大人に与えられた「枠」に疑問を感じたり、息苦しさを感じる子どもが現れはじめるのが、小学校高学年から中学生ぐらい。まさに思春期と呼ばれる時期です。僕自身も「男の子は外遊びをしなさい」と与えられた「枠」に息苦しさを感じていたので、すごく共感します。その息苦しさが「不登校」という形で表れる子もいれば、「非行」という形、あるいは「うつ」や「不安」という形で表れる子もいます。それらについて関心を持った最初のきっかけは、修士課程入学と同時に警察の非行少年のカウンセリングセンターで働き始めたことです。臨床心理士の資格を取ったのは修士課程を終えた後なので、当時はまだ勉強中。どの大学にも犯罪心理学の授業がない時代だったので、手に入る限りの専門書を読み漁り、独学で勉強しました。余談ですが、付箋を貼ったりアンダーラインを引いたりした当時の思い出の本は今も大事にとってあるんです。見返してみると、未来大のこども心理学部の学部長である出口保行先生のお名前も。こうして同じ教壇に立つことになるなんて、不思議なご縁を感じます。

  • 心理学を学ぶ醍醐味

    同じように見えて、小さな変化がある。
    そこに込められたメッセージを感じること。
    だから、演劇もカウンセリングも面白い。

    振り返ってみると、フーテンというか風来坊で生きてますね(笑)。大学4年の時に一般企業の内定をもらったものの、仕事内容のギャップがわかり、ギリギリで大学院進学に切り替えたこともありました。高校生の頃からお芝居を見るのが大好きで、大学では吉田日出子さんや小日向文世さんが活躍していた劇団『オンシアター自由劇場』にドはまりしました。立見や学生券で通いつめ、いっそ大学を辞めて演劇の製作の道にとも考えたけど、役者さんたちに止められたこともありました。一番影響を受けたのは、演劇ですね。今でも、野田秀樹さん、KERAさん、松尾スズキさんのお芝居は欠かさず観ています。毎日同じ演目を観ていると、同じセリフでも、昨日と演技が違うことに気づくんです。これ、カウンセリングにとても似ている。カウンセリングは毎回ダイナミックな変化があるわけではなく、淡々と同じやりとりを繰り返すことが基本。毎回同じ場所で、「調子はどうですか」という定番の質問から始まって、「相変わらずですね」とだいたい同じ返事が返ってくる。演劇のようにお決まりのやりとりなのですが、「同じようなこと」は言っていても、「同じこと」は言ってないんですよね。「やっぱり学校行けませんでした」という言葉も、言い方や声のトーンが僅かに変わっている場合がある。そんな小さな変化をカウンセラーとクライエントが相互に感じ取ることで、さらに変化していくという性質がカウンセリングにはあります。

    精神分析学者の北山修先生は、人生を劇にたとえています。繰り返しの連続の中で変化がある。大学教員をやるようになって、それは授業でも同じだと思うようになりました。授業も、基本は同じことを毎年繰り返していくんですね。でも学生は毎年違うから、同じ内容でもリアクションがちょっと違ったりする。遠目で見ると繰り返しに見えるけれど、どこかに必ず変化がある。すると、時事ネタや最新の研究に話題が飛ぶ。それが面白いんです。そもそも僕は主体であるその人の「メッセージ」にとても興味がある。絵画の作者、演劇の演出家や役者、漫画やアニメの作者。そこには必ずメッセージがあるんです。僕は授業で宮崎駿監督の『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』、黒澤明監督の『赤ひげ』、是枝裕和監督の『誰も知らない』などの作品を使って、登場人物の心の動きを分析することがあります。セリフや演出には、人間の苦しみや喜びなどを伝えたいという、作り手の意図があります。そのメッセージが伝わる瞬間に、心が揺さぶられるんです。カウンセリングも同じです。子どもの行動や発言から、その背景にあるメッセージを汲み取れた時に必ず前に進むんです。友人や家族、身の回りのことに秘められた、小さな「メッセージ」、じっと観察して探してみませんか?これまで見えなかった、新しい世界が見えるかもしれません。

単調な毎日に
思えるかもしれない。
でも、小さな変化を
見つけようと意識してみる。
見方ひとつで、毎日を面白くできる。
心理学の魅力の一つです。

Humans3つのキーワード

  • 01

    愛猫のぷーこ。ボロボロで死にかけていたところを保護しました。犬派だったのに、ぷーこにメロメロに。まさに溺愛です。「お湯が沸いてるよ」と教えに来てくれる賢い子です。僕が落ち込んでいたり疲れていたりすると、喉をゴロゴロ鳴らして鼻でスリスリしてくれる優しい子です。猫好きの友人が「猫飼うと増えるよ」と言ってきましたが、その予言通り、二代目ぷーすけ、三代目npちゃんを保護しました。大人になってから人間よりも命の短い生き物と出会ったことで、死生観、人生観が変わりました。みんな大切な家族です。

  • 02

    赤の広場でAppleのニット帽。ソ連が崩壊した2年後に、エルミタージュ美術館を目指し、ロシアをシベリア鉄道で旅しました。停車駅では、ふかしたジャガイモを売る女性達の傍らで、ウォッカの瓶を抱えて酔っぱらって寝ている男性が多くいました。SONYの看板が立ち、McDonald'sに行列ができていて、倒されたままのレーニン像も見かけました。モスクワの人とお話をすると、「これからきっと良い社会になっていく」と目を輝かせていました。そして、ウクライナのチェルノブイリの方角を示して「こんなに悲しいことはない」と涙を浮かべていました。社会に変動はつきものですが、泣くのは民衆ばかりということはあってはならないはずです。異国を旅すると、その土地の「空気」を肌で感じることができます。

  • 03ふざけてばかり!

    大学院修士課程の恩師の山本和郎先生は、ご自宅の書斎で毎年「おでんパーティ」を開催してくださいました。先輩後輩、皆集まって、先生が仕込んでくださったおでんをいただきながら、ワイワイと心理臨床談義。カウンセリングのポリシーやカウンセラーとしてのキャリア形成の話は本当に勉強になりましたが…僕の場合は楽しむことが最優先。写真のようにパロディTシャツを着たり、被り物をしたり。深夜まで飲んで泊めていただくのがお決まりコースでした。勉強は大事だけど、勉強だけの人間になってしまうのもつまらない。学生には「メリハリをつけよう。やることはしっかりやった上で、遊ぶ時はちゃんと遊ぼう」と伝えています。

こんなこと学べます、
ゼミ生たちの卒業論文

大学生の心理的ストレスが規範意識に及ぼす影響/いじめ被害体験の心理学的研究-ソーシャルサポートの有無が対人関係に与える影響-/妖怪とヒトの関係についての心理学的研究-恐怖に注目して-/居場所の有無が不登校に及ぼす影響/教師の感情管理と教師効力感がバーンアウトに及ぼす影響/ひきこもりの内界に対するナラティブ・アプローチ/親子の愛着形成と非行の関係‐「欲求」との関連‐/ストレスや環境が自殺にどう影響するのか/自己愛傾向の高さがリスク認知や防犯意識に与える影響

など

著書・論文

  • 子ども・若者の自殺未遂に対するコンサルテーション

    [論文]単著/東京未来大学研究紀要,16,141‐153/2022

    コミュニティ心理学の鍵概念である「予防」「危機介入」「コンサルテーション」を用いて、子ども・若者の自殺未遂について架空事例を用いて考察した。この論文自体が自殺予防の心理教育の教材となるよう作成した。

  • 子どもを支援する教育の心理学

    [著書]共著/ミネルヴァ書房/2021

    子どもを支援する現場に役立つ心理学の知見を具体的に紹介。その中で、「ゲーム障害」と「ひきこもり8050問題」について解説した。

  • クローズアップ「健康」(現代社会と応用心理学3)

    [著書]共著/福村出版/2015

    現代日本社会における健康に関するトピックを心理学的に解説。その中で、「トピック1 ひきこもる若者の心理とその援助」を執筆した。

  • 高齢の女子受刑者の特徴:境界性パーソナリティ障害傾向に注目して

    [論文]共著/応用老年学研究,9(1),82-89/2015

    刑務所で大規模調査を実施した。高齢の女子受刑者の中で、境界性パーソナリティ障害傾向が高い場合、再入所のリスクが上昇することが認められた。

  • セラピストが物語を大切にする意味

    [論文] 単著/哲学,131,205-234/2013

    カウンセリングや心理療法という営みについて、物語(演劇や小説など)の構造と機能を用いて解説をした。その際、野田秀樹、KERA、クドカン、野村萬斎などの「物語のプロ」の言葉を援用した。

研究者詳細

Humans